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料理における「乳化」について。
Back to top1) 化学的説明
乳化させることによって得られる物質はコロイド溶液であり、「エマルション」(乳液)と称される。
現象としては、水と油に対して界面活性剤を添加することで「ミセル」を形成し、水と油が混合した状態を作り出す。
乳化の状態としては「水中油滴型」と「油中水滴型」があり、代表的なものには以下のものがある。
- 水中油滴型
- 牛乳, マヨネーズ
- 油中水滴型
- バター, マーガリン
乳化した状態は、温度変化に弱い。温度が高くなると、乳化に使用した界面活性剤(食品ではタンパク質)が凝固することによって分離する。また、温度が低くなると、タンパク質の運動量定価、油脂の形状変化、水分が凍るなどを原因として分離する。
「乳化」はあくまで水と油が混合した状態を表現しているのであって、物質の粘度を表現するものではない。
Back to top2) 乳化に使用できる物質
乳化作用がある物質は「界面活性剤」であるが、食品添加物としては「乳化剤」と称される。
化学合成された乳化剤ではなく、食品由来の乳化剤はリン脂質由来のものであり、以下のものがある。
- レシチン
- 卵黄、大豆製品、穀類、ゴマ油、コーン油、小魚、レバー、ウナギなどが挙げられる。
- 特に、卵黄から分離したものは「卵黄レシチン」、大豆から分離したものは「大豆レシチン」と称される。
- サポニン
- 大豆、小豆、オリーブなどに含まれる。
- 他にも含む植物は存在するが、界面活性作用が毒性として作用することが多く、食用とは考えにくいので除外しておく。
- カゼイン
- 乳製品(牛乳やヨーグルトなど)に含まれる。
- 牛乳は、乳脂肪と水分がカゼインによって乳化していると表現できる。
調理時に乳化させるには、おもにレシチンを使用することを考えたほうがよい。
パスタソースを乳化させる場合は、パスタの茹で汁を使用する。この際は、パスタの原料である小麦粉由来のグルテンが乳化剤の役割をするが、化学的作用としてミセルが形成されているとは考えにくい。グルテンを形成するグルテニンとグリアジンの結合を油脂が阻害することで、乳化とは似て非なる状態を形成していると考えられる。
上記に列挙されているもので、すでに油脂の形状になっているものには、乳化作用は期待できない。例えば、ごまはすりごまの形状で使用することによって、乳化作用が期待できるようになる。
2.1) レシチンを多く含む食物
レシチンはもともとホスファチジルコリンのことであるが、現在はリン脂質を含有する脂質製品をレシチンと称している。
以下にレシチンを多く含む物質を列挙する。
| 名称 | 100gあたりの含有量 |
|---|---|
| 卵黄 | 630mg |
| 鶏レバー(茹で) | 210mg |
| 白身魚卵(天然生) | 220mg |
| 大豆(生) | 65mg |
| イエローマスタードシード | 75mg |
| パセリ(乾燥) | 72mg |
参考:http://www.koyojapan.jp/pdf/TOPIX_174.pdf
他に、乾燥パプリカも微量ながらレシチンを含んでいる。
Back to top3) 乳化作用を利用したもの
3.1) マヨネーズ
- 材料
- 卵黄, 塩, マスタード, 油, 酢(ワインビネガーとか)
3.1.1) 作り方
- 卵黄に塩とマスタードを加える。このとき、塩を加えすぎない(せいぜい5gくらいにしておく)。
- 混ぜながら、油を少しずつ追加する。
- 混ぜたものの粘度が高くなり、混ぜるのが面倒になってきたら、酢を少量加える。
- 2〜3を繰り返して、よいと思う量と味になったら終了。
- 解説
- 乳化は、卵黄とマスタードに含まれるレシチンで行なわれる。
- 塩には、粘度を上昇させる役割がある。
- 注意点
- エクストラバージンオリーブオイルを使用する場合、オリーブオイル中にサポニンが含まれているため、卵黄レシチンによる乳化が阻害される。このため、マヨネーズ制作に失敗し、分離しやすい。
- 備考
- 上記材料のとおりに作成すると、うまみが不足している。
- 日本で販売しているマヨネーズの味に近付けようとする場合は、グルタミン酸系の物質(こんぶ茶など)を添加する必要がある。こんぶ茶を使用する場合は、マヨネーズの形になった後に添加する。