料理メモ:概論

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1) 調理に使用する熱の種類

調理には以下に分類される熱を使用する。

輻射熱
(遠)赤外線によるもの。重力に影響されない。
伝導熱
熱せられた固体(金属)に接触して、食材に伝わる熱。
対流熱
熱せられた液体もしくは気体を経由して、食材に伝わる熱。重力や対流運動によって、熱の伝わり方が変わる。
摩擦熱
電子レンジのマイクロ波によって振動した水分子から発生する熱。
  • 鍋に液体を満たして加熱した場合は、鍋内の液体が食材に対流熱をもたらす。
  • ただし、鍋に満たしている液体は鍋からの伝導熱で熱せられているため、液体の粘度が高いと鍋底が焦げつく。
  • フライパンで加熱した場合は、食材にはフライパンからの伝導熱と、フライパン内部に空気の微量な対流熱がもたらされると考えられる。
  • 焼き網で調理した場合は、食材には熱源からの輻射熱と空気の対流熱がもたらされる。
  • 蒸し器やオーブンでの調理は、内部に満たされた気体による対流熱で加熱される。
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2) 真空調理

調理対象を空気に触れさせない環境を用意することで実現する。容器から空気を抜くだけであり、圧力は関係ない。

2.1) 調理器具の例

  • ビニール袋
  • 真空パック器具
  • 減圧容器

2.2) ビニール袋を使用する場合の選定

  • 穴が開いていないもの
  • 耐熱/耐冷温度を確認する
  • 加熱する場合は、高密度ポリエチレン(カサカサ音がするほう)を選定する
  • 基本的に使い捨てる前提:ジップロックあたりだと単価が高く、そもそも湯煎する行為が非推奨

実際には、加熱してよい説明が記載されているものを使用するのがよい。

2.3) 真空調理における「加熱」

真空調理では低温調理が可能になる。しかし、食材によっては食中毒や寄生虫の危険性があるため、加熱温度と時間を考慮する必要がある。
※内臓系部材は、そもそも低温調理不可。

原理としては、タンパク質の凝固温度(58〜60℃)から分水作用が開始する温度(66℃)の間の温度で火を通す行為になる。

2.3.1) 推奨調理温度/時間

ここでの「温度」は中心温度であり、表面温度ではないことに注意。

食材温度時間
55℃102分
57℃60分
55℃60分

参考:

2.3.2) 低温調理に使用できる調理器具

低温調理用ヒーター
機材として15,000円以上するし、ヒーターなので、電気代もかかる。
保温調理鍋(シャトルシェフ)
湯船の水温が下がりにくい原理を利用するため、少量の調理であっても、鍋の水は8分目以上にする。
加熱後して保温容器に入れる際、保温容器に熱が奪われるので、期待する温度よりも高い温度(75℃くらい?)に加熱する必要がある。
また、時間経過で温度が低下していくことを考慮しなければならない。
炊飯ジャーの保温機能
あらかじめ、期待する温度が保持され続けるかどうかを確認しておく必要がある。
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3) 加圧調理

圧力鍋を使用することで実現する。

加熱して気化した水を利用して圧力を上げるため、排気方向で動作する弁が付いている。

3.1) 調理器具の例

  • 圧力鍋
  • 飯盒(それほど期待してはいけない)
  • 無水鍋(加熱時:過度な期待をしてはいけない)

3.2) 加圧調理の原理

鍋内部の気圧が上昇することによって、水の沸点が上昇する。

100℃より上の高温や高圧により、野菜類ならば細胞壁が早く破壊され、肉類ならタンパク質や繊維が早く分解されるため、短時間で調理することが可能となる。

加圧調理は食材の破壊が伴うため、調理時間が長くなると煮崩れるようになる。

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4) 減圧調理

無加水鍋を使用することで実現する。

弁が付いている無加水鍋の場合、圧力鍋とは逆の動作をする。加熱中は蒸気を逃がし、加熱終了後に吸気しないことで減圧する。

弁が付いていない鍋の場合は、鍋とふたが段差でかみ合う構造になっている。これによって、水の沸騰によって発生した蒸気が鍋とふたの間に付着してシーリング作用を発生することで、吸気されないようになる。

4.1) 調理器具の例

  • 無水鍋
  • ビタクラフト
  • 弁付きの無加水鍋いろいろ

4.2) 減圧調理の原理

加熱終了後に鍋内部の気圧が下がることで、食材内部に含まれる空気や水分が排出される。そして、鍋の減圧を解除した時点で食材が周囲の液体を取り込み、味がしみる。

圧力鍋と違い、食材が煮崩れる可能性は低い。

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5) オーブンによる揚げ物調理

揚げ物は、熱の伝導体として油を使用するが、熱した空気でも実現はできる。

油を使用して揚げ物をする場合と同様に、ホットスタート(予熱あり)で調理を始める。

5.1) 調理時の注意点とか

  • 空気は油よりも調理対象に対する熱伝導率が低いため、油よりも高温かつ調理時間を長く用意する必要がある。

  • 空気は油よりも調理対象に浸透しにくいため、中心まで加熱するのが難しい。調理時間を短縮する場合は、コンビ調理(オーブンと電子レンジの併用)を検討する。

  • 衣に卵を使用する揚げ物の場合はマヨネーズで代用することができるが、マヨネーズには塩分が含まれるため、下味の塩分を少なくする。

  • 衣に卵を使用しない揚げ物の場合、衣を付けた後に油を吹き付ける。

  • 調理時に網を使用すると、余分な油を下に落とすことが期待できる反面、油が抜けすぎてパサパサになる可能性がある。

  • 調理時間を見計らって、調理対象を裏返す必要がある。油よりも裏表の調理度合いの違いが出る。

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6) 炭火での焼き物

炭火調理に別記。

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7) 油の発煙点

油は、精製度によって煙が上がり始める温度が異なる。詳細はウィキペディアあたりを参照。

発煙点が高いほど高温調理に耐えられるということになるが、それだけ不純物が少なく、油自体の風味が乏しいともいえる。

表として以下にまとめておく。

油の種類発煙点
キャノーラ油204℃
エキストラバージンオリーブオイル160℃
オリーブオイル200℃
ココナッツオイル177℃
ピーナッツオイル225℃
ひまわり油266℃
べにばな油266℃
米油232℃
グレープシードオイル216℃
ごま油175〜210℃
バター175℃
ラード185℃
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8) 中華料理に関すること

8.1) 味覚表現

甜(tián:ティエン)
甘い味
酸(suān:スアン)
すっぱい味
咸(xián:シエン)
塩からい味
苦(kǔ:クー)
苦い味
辣(là:ラー)
ヒリヒリする(辛い)味

四川料理では、以下が追加される。

麻(má:マー)
刺激
香(xiāng:シアン)
香り
鮮(xiān:シエン)
うま味
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9) 温度による肉の変化

50℃:ミオシンの変性開始
肉の食感が、歯切れのよいものに変わる。
56℃:コラーゲンの変性開始
ゼラチン質に変化する。
実際にコラーゲンのゼラチン化が進みやすい温度は70℃。
60℃:肉の変色開始
透明感がなくなる。
66℃:アクチンの変性開始
肉汁が排出される。
155℃〜:メイラード反応
肉の表面が茶褐色に色付き、香ばしい香りがたつ。

参考:絶対に失敗しない肉料理のコツ!「火入れの科学」-[知識編]

9.1) 厚生省の指針

厚生省の定める、特定加熱食肉製品における加熱時間と温度は以下のとおり。

温度時間
55℃97分
56℃64分
57℃43分
58℃28分
59℃19分
60℃12分
61℃9分
62℃6分
63℃瞬時
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10) 消毒

食中毒やウイルス性腸炎が疑われる場合、拡散防止を目的として、汚染された場所や物を消毒する必要がある。

消毒液としては、以下が使用されることが多い。 * (消毒用)エタノール * 次亜塩素酸ナトリウム

10.1) 消毒に使用される薬物の作用

10.1.1) 消毒用エタノール

消毒用アルコールは、日本の酒税法の関係により、エタノールに対してイソプロピルアルコールなどが添加されているものである。人体への有害性が低いものとされているが、飲用するものではない。

コスト面では劣るが、無水アルコールでも同様の効果が期待できると考えられる。

実際の作用としては、脂溶性の殻(エンベローブ)を持つウイルスに馴染んで破壊していく。

このため、インフルエンザウイルスなどには有効だが、ノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルスやライノウイルスには実質的な効果はない。

10.1.2) 次亜塩素酸ナトリウム

水溶液中の次亜塩素酸(HClO)及び次亜塩素酸イオン(ClO−)が持つ酸化作用により殺菌する。

散布や噴霧による効果は期待できるが、気化することで空間を殺菌する効果が得られるかどうかは疑わしい。

10.2) 実際の対応

10.2.1) 手洗い

手や指の股、爪の間を石けんと流水で入念に20~30秒間洗い、手指を経由してウイルスを飲み込まないよう、汚染を物理的に除去する。

10.2.2) 洗濯や洗浄が可能な物の場合

次亜塩素酸ナトリウムを含有した塩素系漂白剤を、説明書きに記載された濃度で使用する。

なお、汚染されたものは、汚染されていないものと一緒に洗濯や洗浄をしてはいけない

10.2.3) 床面やドアノブなど、拭き取りまでしかできない場合

次亜塩素酸ナトリウムを含有した塩素系漂白剤を0.02%(500ccペットボトルに、5〜6%漂白剤をペットボトルのキャップ半分の量が目安)に薄め、散布する。

金属など、腐食や変色が考えられる物は、30分後を目処に拭き取る。

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