パンとか麺とか。
Back to top1) 小麦粉の選択
小麦粉には薄力粉, 中力粉, 強力粉とあり、「力」はグルテンの含有量を示している。強いほどグルテンを多く形成する。
| 小麦粉の種類 | グルテン含有率 |
|---|---|
| 薄力粉 | 7.5〜9% |
| 中力粉 | 10〜12% |
| 強力粉 | 12〜14% |
| 全粒粉 | 8%〜 |
グルテンは弾力と粘りのある膜を作り出し、その膜の中に気体を閉じ込める。パンの柔らかさは、グルテンに依る部分が大きい。
逆にグルテンの形成を阻害すれば、サクサクと歯切れのよい食感が得られる。
Back to top2) グルテンのコントロール
グルテンの形成は、以下のような特性がある。
- 砂糖や脂肪で、グルテンの形成が阻害される
- 砂糖はグルテン形成時に必要となる水分を奪い、脂肪はグルテン形成(共有結合)を阻害する。
- こねる行為がグルテンの形成を助長する
- こねる行為が、グルテンを形成するグルテニンとグリアジンを衝突させる役割を持つ。
- ただし、こねすぎると、小麦粉に含まれる酵素によってグルテンが分解され始める。こねる行為は、1〜5分に留める。
- 水は多すぎてもいけない
- グルテンの形成には水分が必要だが、水分が多すぎると、グルテニンとグリアジンが衝突しにくくなり、グルテンが形成されにくくなる。
- パンを作る場合の目安としては、小麦粉対水の重量比が1対0.6〜0.65、体積比では10対3〜3.5が望ましい。ただし、小麦粉が吸湿していることを考慮に入れておく。
| 小麦粉の重量 | 水の容量 |
|---|---|
| 100g | 60〜65ml |
| 150g | 90〜97.5ml |
| 200g | 120〜130ml |
| 250g | 150〜162.5ml |
| 300g | 180〜195ml |
| 350g | 210〜227.5ml |
| 400g | 240〜260ml |
| 450g | 270〜292.5ml |
※小麦粉は、1カップ(200ml)で110〜120g。
多加水パンでない場合は、こねている際、生地が1つにまとまっているかつ、手に生地が付かない状態が望ましい。
- ミネラルと塩分、pH値に気をつける
- パンを作る場合の塩分は、全体重量の1〜2%(小麦粉200gの場合は、3.2〜6.4g)にする。1.7%くらいが望ましいらしい。減塩パンを作る場合はこの限りではない。
- pH値が高い(アルカリ性)だと苦いパンができあがるので、中性になるようにする。
2.1) 牛乳(成分)の作用
小麦粉に牛乳(粉乳)を添加すると、以下の作用が見込まれる。 * グルテン形成の阻害 * 小麦粉由来の匂いのマスキング
パンを作成する際に水を使用した場合は、いわゆる「もちもち」した食感となる。
対して、牛乳を使用した場合は、「ふんわり」した食感となる。
Back to top3) イーストを使用した発酵
パンをふくらませる時にはイーストを使用する。
パンに使用するイーストは、13〜24℃でいちばん活動するものが使用される。温度が低いと活動を停止し、高い(55℃以上)と死滅する。
実際にパンを発酵させるには、22〜26.5℃の環境が望ましい。
発酵は微生物の仕事であるため、1時間以上は要する。
3.1) 発酵の際に砂糖を添加する場合
イーストの発酵を手助けすることを目的として、砂糖を添加することがある。
添加する割合(ベイカーズパーセント)は以下のとおり。
| パンの種類 | 割合 |
|---|---|
| フランスパン | 0% |
| 食パン | 4〜6% |
| 菓子パン | 8〜30% |
ただし、甘い菓子パンを作る際は、酵母が作用しすぎてしまい、逆に発酵による膨張が阻害される。このため、対糖性イーストを使用する必要がある。
3.2) プルーフィング
イーストが死んでいないことを確認するためには、「プルーフィング」を実施する。
イーストと砂糖を容積比で2対1として、ある程度のぬるま湯(38〜40℃)の環境で2〜3分放置する。
小さな泡ができる場合は、イーストが活動している。できない場合はイーストが死滅しているので、発酵には使用できない。
3.3) 1次発酵, ベンチタイム, 2次発酵
1次発酵は、材料を混ぜ合わせた直後に実施すること。30分以上の時間を要する。1次発酵の完了は、「フィンガーテスト」と呼ばれる方法で確認をする。
「フィンガーテスト」は、発酵して膨らんだ生地に指を差し込んでできた穴の状態で判定する。
- 穴が埋まっていく
→ 発酵時間が不足している → 発酵時間を延長する - 穴がそのまま
→ 1次発酵は完了として、生地を再度少々こねてベンチタイム(10分くらい)をとる - 穴がしぼんでいく
→ 発酵させすぎ → 生地を再度少々こねるが、ベンチタイムはとらない
1次発酵とベンチタイムの間に生地を少々こねるのは、発酵された状態を均一化する目的がある。
ベンチタイム後に焼成前の整形をして2次発酵に移行する。、2次発酵は、開始時から生地の容積が2倍くらいに膨らんだら完了とする。
なお、発酵後の生地を分割する際は、発酵した生地にダメージを与えるため、生地をちぎってはならない。スケッパーや包丁などで切断する。
パン作成時においては、2次発酵は必須というわけではない。
3.3.1) 発酵不足, 発酵させすぎの結果判定
発酵度合いは、焼いた後のにおいで判定できる。
- 粉っぽいにおいがする → 発酵不足
- アルコール臭い → 発酵させすぎ
3.4) 発酵中生地の冷凍保存
発酵中の生地を冷凍保存する場合、以下のタイミングで中断して冷凍することになる。
- 1次発酵前
- 2次発酵前
1次発酵前で冷凍する場合、再開時に1次発酵と2次発酵を実施することになるため、時間短縮にはあまりつながらない。
2次発酵前で冷凍する場合は、再開時に2次発酵を実施することになり、1次発酵の時間を短縮することができる。
生地を冷凍保存する場合は、冷凍庫に入れた直後からしばらくの間に発酵することを避けるために、生地を小分けにする。再開時には冷凍してあった生地を電子レンジに30秒ほど入れて、発酵を促すようなことをする。
3.5) パンのさまざまな製法
http://www.panpedia.jp/knowledge/termtip.htmlを参照。
3.6) イースト菌を使用したパン
3.6.1) 食パン
配合は以下のとおり。
| 材料 | 1斤の分量 | 1.5斤の分量 |
|---|---|---|
| 小麦粉 | 300g | 450g |
| 塩 | 5g | 7.5g |
| ドライイースト | 3g | 3g |
| 砂糖 | 15g | 22.5g |
| 油脂 | 20g | 30g |
| 牛乳 | 大さじ2 | 大さじ3 |
| ぬるま湯 | 150cc | 240cc |
※ドライイーストについては、発酵時間を長く確保すればよいので、小麦粉の量に準じて増量する必要はない。
型の内側にはサラダ油を引き、そこに強力粉を振ることでこびり付きを防止する。
2次発酵は、型の中で7分目くらいまで膨らんだら完了とする。
ガスオーブンの場合、加熱時間は180℃で20分。
電気オーブンの場合、加熱時間は180℃で30分。
焼き上がったら、イーストの発酵臭を抜くために、パンを型から取り出して30分くらい放置する。
3.6.2) ハンドトス可能なピザ生地
配合は以下のとおり。
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 小麦粉 | 300g |
| 塩 | 5g |
| ドライイースト | 3g |
| 油脂 | 5〜10g |
| ぬるま湯 | 150cc |
2次発酵は不要だが、ベンチタイムは用意する。
Back to top4) イーストを使用しないパンの作成
イーストに期待しているのは、生地を膨らませることである。生地が膨らむ結果が得られるのであれば、かならずイーストを使用しなければならない、ということではない。
イーストで生地を膨らませるのは生物学的作用である。対して、重曹やベーキングパウダーを使用して生地を膨らませるのは化学的作用である。
重曹やベーキングパウダーを使用する場合は、発酵時間を考慮しなくてよい。むしろ、加えた材料によっては反応(発泡)が開始してしまうので、材料を混ぜるのと同時にオーブンの予熱を実施するような工夫が必要となる。
4.1) ベーキングパウダーを使用したパンの作成
ベーキングパウダーは、加熱した際に気体が発生するようにデザインされている。ただし、ベーキングパウダーは構成物質自体で反応していくので、ベーキングパウダーには使用期限が存在する。
ベーキングパウダーを使用して生地を膨らませる場合、小麦粉中の糖分が一切変化しないため、イーストを使用したときにおける「発酵不足」の状態になる。粉っぽいにおいをマスクするために、牛乳やヨーグルト、上書きするためにバニラエッセンスや黒糖などを使用する必要がある。
4.1.1) 中華風生地
おもに蒸し物として使用する生地。配合は以下のとおり。
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 薄力粉 | 150g |
| ベーキングパウダー | 5g |
| 砂糖 | 5g |
| 牛乳 | 80ml |
| サラダ油 | 10g |
生地は手でこねられるようになる。ひとまとめにした後、生地をラップに包んで15分ほど寝かせる。
寝かせた後に生地を整形して加熱する。蒸す場合は、水が沸騰してから10分くらい蒸す。
4.1.2) ピザ風生地
焼き上がりが固めに仕上がる生地。配合は以下のとおり。
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 薄力粉 | 150g |
| ベーキングパウダー | 5g |
| 塩 | 2g |
| 牛乳 | 100ml |
| ヨーグルト | 50g |
| サラダ油 | 3g |
生地は手でこねられるくらいにはならず、ペースト状になる。オーブンの天パン上で生地を整形する。
加熱は、200℃のオーブンで15分くらい。生地を下焼きする場合は、合計で15〜17分くらい。
4.1.3) パン風生地
焼き上がりがパンみたいになる生地。配合は以下のとおり。
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 薄力粉 | 150g |
| ベーキングパウダー | 5g |
| 砂糖 | 9g |
| 塩 | 2g |
| 溶き卵 | 1/2個分 |
| 牛乳 | 60ml |
| ヨーグルト | 60g |
生地は手でこねられるくらいにはならず、ペースト状になる。
焼くのに使用する容器に生地を流し込んだり、オーブンの天パン上で生地を整形したりする。
焼くのに容器を使用する場合は、180℃で30分。天パン上で直に焼く場合は、180℃で15分が目安。生地を分割する場合は、温度は180℃で、生地の大きさに応じて時間を短くする。
4.2) 重曹を使用したパンの作成
重曹は、水に溶けるとアルカリ性溶液となる。アルカリ性溶液は口に入れると苦い刺激があり、食べ物として食べられなくなるので、中和して酸性もしくは中性にする必要がある。
ただし、重曹を酸性の液体で中和すると、重曹の反応が始まってしまうので、生地を膨らませる役割では使用できなくなる。このため、生地の構成が酸性に傾いている場合に、ベーキングパウダーと重曹の両方を使用するような選択となる。
重曹のみを使用する場合、クエン酸粉末を使用することになる。生地に重曹とクエン酸粉末を混ぜ合わせると、その時点で反応が始まるので、手早く攪拌を終了させ、すぐに焼く必要がある。
また、重曹には小麦粉を黄色く着色する役割がある。
4.3) チャパティを作る
チャパティは、インドの家庭で普段の食用にされる全粒粉を使用した未発酵のパンのこと。対して、ナンは発酵パンであり、小麦粉も精製されたものを使用する。
チャパティは、全粒粉, 水, 塩の比率は、50:35:1で作成する。高級感を出す場合は、少々オリーブオイルなどを添加する。
生地をこねた後は、容器にラップをかけて30分ほど休ませる。その後、適当な量を円形に延ばして油をひかないフライパンで両面を焼く。
4.4) ターピンを作る
ターピンは北京の未発酵小麦粉料理。パイ生地のような層を形成することで、食べやすい食感にする。
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 薄力粉 | 200g |
| ぬるま湯 | 120cc |
| 塩 | 2〜3g |
| 油 | 15cc |
※ぬるま湯は、水を電子レンジ(600W)で20秒加熱すればできあがる。
- 薄力粉をぬるま湯でこねる
- 生地として伸ばせる状況になったら、25×30cmの楕円形に伸ばす
- 生地の表面全体に塩を広げる
- 生地の表面全体に油を広げる
- 生地を巻く
- 巻いた生地を2等分にして、両端を閉じる
- 生地の両端を上下にして、ひねって押しつぶす
- 焼く直前に、生地を直径18cmくらいの円状に伸ばす
- 強火で生地を10秒焼く
- 生地を裏返す
- 中火にして、フタをして1分蒸し焼きにすることを合計3回実施する
- フタを開けて、強火で10秒焼く
- 火から下ろしたら、適当な大きさに切る
5) お菓子系
5.1) 自作ホットケーキミックス
配合は以下のとおり。
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 薄力粉 | 150g |
| 砂糖 | 40g |
| ベーキングパウダー | 小さじ2 |
※ベーキングパウダーは、小さじ1で3g。
5.2) クッキー
配合は以下のとおり。
| 材料 | 分量 | ベーカーズパーセント |
|---|---|---|
| 薄力粉 | 150g | 100% |
| 砂糖 | 40g | 30%くらい |
| ベーキングパウダー | 5g | 3% |
| 油脂 | 50g | 33% |
※砂糖は油脂を吸収しないので、油脂の量は小麦粉の量を基準に考える。
180℃で15分焼く。
Back to top